この記事の監修・執筆者:小林 勇太(柔道整復師/接骨院長)

「平地を歩くのは平気なのに、階段を降りるときだけ膝がズキッと痛む……」
「階段を下りるのが怖くて、一段ずつおそるおそる下りている」

変形性膝関節症でお悩みの方から、特に多く寄せられるのが「階段の下り方」に関するご相談です。実は、階段を降りるときは、上る時よりも膝に大きな負担がかかっています。

しかし、正しい足の出し方(順番)と手すりの使い方をマスターするだけで、膝への衝撃を劇的に減らすことができます。

今回は、現役のプロの視点から、変形性膝関節症の方のための「正しい階段の下り方」と下り階段で膝が痛む理由、今日からできる膝のセルフケアまでわかりやすく解説します!




1. 結論!変形性膝関節症の階段は「下りは痛い足から」

まずは、一番大切な基本ルール(合言葉)を覚えましょう。

【階段昇降の黄金ルール】

  • 上り:**「痛くない方の足(良い足)」**から上る

  • 下り:**「痛い方の足(悪い足)」**から下りる

※覚え方:「行き(上り)はよいよい、帰り(下り)はこわい(悪い足)」

なぜ「下りは痛い足から」出すのか?

一見、「痛い足から下りたら余計に負担がかかるのでは?」と思われがちです。しかし、理由は「上の段に残って身体を支える足」にあります。

  • 痛い足から先に下の段へ下ろす場合: 上の段に残って体重を支えるのは「痛くない方の足(良い足)」になります。良い足でしっかりブレーキをかけながら体を静かに沈められるため、下の段に着地する痛い足への衝撃を最小限に抑えられます。

  • 痛くない足から先に下ろす場合(NG): 痛い方の足が上の段に残ってしまい、体重を一手に支えなければならなくなります。これが激痛の原因になります。

2. 【ステップ解説】膝の負担を減らす「正しい階段の下り方」

具体的にどのように階段を下りればよいか、3つのステップで解説します。

ステップ①:手すりをしっかり握る(痛くない手、または両手)

  • 手すりを使うことで、膝にかかる負担を20〜40%カットできます。

  • 手すりは、基本的に「痛くない側の手」で握ります(両手で掴めるなら両手がベストです)。

ステップ②:「痛い方の足」を先の段へ下ろす

  • 手すりに少し体重をあずけながら、「痛い方の足」を下の段へそっと下ろします。

  • 爪先から着地する意識を持ち、ドスンと勢いよく足をつかないように注意しましょう。

ステップ③:「痛くない方の足」を同じ段に揃える

  • 上の段に残っていた「痛くない方の足」をゆっくり下ろし、同じ段に両足を揃えます(一段ずつ揃えて下りる)。

  • 一段ずつ確実に揃えて下りることで、片足立ちになる時間を短くし、膝のグラつきを防ぎます。

3. なぜ「下り階段」は上りより膝が痛むのか?

「上るより下りる方が圧倒的に痛い」のには、解剖学的な2つの理由があります。

① 膝にかかる衝撃が「体重の3〜5倍」に達する

平地を歩く時の膝の負荷は体重の約1.5倍ですが、階段を下りるときは体重の約3〜5倍(体重60kgの人なら180〜300kg)もの衝撃が瞬間的に膝関節へかかります。 軟骨がすり減っている変形性膝関節症では、この巨大な圧縮力をクッションで吸収しきれず、骨や関節包に直接負荷がかかって激痛を生みます。

② 太ももの筋肉(大腿四頭筋)が伸ばされながら耐えるから

下り階段では、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が「伸びながら力を発揮する(遠心性収縮)」という最も負担の大きい動作を強いられます。筋力が低下していると、ブレーキが効かずに膝関節へダイレクトに衝撃が伝わってしまいます。

4. 杖を使う場合の階段の下り方

普段から杖(ステッキ)を使用している方は、以下の順番で下ります。

杖を使った下り方の順番: ① 杖② 痛い方の足③ 痛くない方の足

  1. まずを一段下につく

  2. 次に痛い方の足を下ろす

  3. 最後に痛くない方の足を下ろして段に揃える

※合言葉は「杖・患(かん)・健(けん)」です。

5. 下り階段の痛みを和らげる!簡単リハビリ&ストレッチ

階段の下りでの痛みを根本的に減らすには、膝を支える筋肉の補強と柔軟性が不可欠です。

① パタパタ足上げ運動(大腿四頭筋トレーニング)

  1. 椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばします。

  2. 片方の足をゆっくりと水平に持ち上げ、つま先を自分の方へ向けます。

  3. 太ももの前に力が入っているのを感じながら5秒キープ。

  4. ゆっくり下ろします(左右10回ずつ×1日2〜3セット)。

② 太もも前のストレッチ

  1. 壁や柱に手をついて立ちます。

  2. 痛みのない範囲で足首を持ち、かかとをお尻に近づけます。

  3. 太ももの前側が気持ちよく伸びた状態で20〜30秒キープします。 ※太ももの前が柔らかくなると、膝のお皿(膝蓋骨)への圧迫感が軽減されます。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 階段は極力使わない方がいいですか?

A. 痛みが強い時期(炎症期)は無理をせずエレベーター等を使いましょう。 ただし、全く動かさないと筋力が衰えて悪循環に陥ります。痛みが落ち着いている時は、正しいフォームと手すりを活用して、無理のない範囲で階段を使うことが筋力維持につながります。

Q2. 膝サポーターは階段を下りるときに効果がありますか?

A. 非常に効果的です。 サポーターを装着することで膝関節が安定し、お皿のぐらつきを抑えて衝撃を分散してくれます。外出時や階段の昇降が多い日は積極的に活用をおすすめします。

7. まとめ:正しい降り方で膝の痛みを予防しよう

変形性膝関節症での「階段の下り方」のポイントをまとめます。

  • 下りは「痛い方の足」から先に下の段へ下ろす

  • 手すりをしっかり握り、一段ずつ両足を揃えて下りる

  • 着地は静かに、足裏全体またはつま先からそっとつく

  • 日頃から「太ももの筋肉」を鍛えてクッション性を高める

階段の下り方ひとつを変えるだけでも、日常の膝へのダメージは大幅に軽減できます。「もう歳だから」「痛いから出歩きたくない」と諦めず、まずは次に階段を下りるときに「痛い足から」意識してみてください。

「正しく下りても痛みが引かない」「歩くだけで膝が痛む」という方は、自己判断せず、お早めに当院へご相談ください。解剖学に基づいた適切な施術とトレーニングで、スムーズな歩行を取り戻すサポートをいたします!

ABOUT ME
こばやし先生
東京都葛飾区で「こばやし接骨院」を経営する柔道整復師(国家資格保持者)。延べ2,000人以上の施術実績に基づき、「どこに行っても痛みが治らない」と悩む方を減らしたい想いから本メディアを立ち上げました。湿布や薬に頼らず、自宅でできる解剖学に基づいた正しいストレッチやセルフケアを発信中。